直木賞の由来と代表的受賞作

直木賞は、芥川賞とともに広く世間に知られていますが、どのような由来の賞かはあまり知られていないようです。優秀な大衆文学に贈られる直木賞は、どのような賞なのでしょうか。

直木賞の由来は?

「直木賞」とは通称であり、本来は「直木三十五賞」が正式な名称です。若くして亡くなった作家、直木三十五の友人であり、文藝春秋の創業者でもある菊池寛によって芥川賞と同時に制定されました。制定されたのは直木三十五が亡くなった翌年となる昭和10年で、当初は無名または新人の作家を対象とした賞でしたが、現在では新人だけでなく、中堅作家も対象になっています。

直木三十五は、作家活動のみならず、映画の制作や雑誌の編集にも携わっており、大衆向けの芸術や文化に広く貢献しました。

直木三十五とは

直木三十五はペンネームで本名は「植村宗一」です。ペンネームの読み方は初めて目にすると戸惑う人が多いようですが、「なおき さんじゅうご」と読みます。本名の「植」を分解して「直木」、「三十五」は年齢が元になっています。

直木三十五が31歳のとき、「直木三十一」のペンネームを用いて書かれた月評が作家の始まりで、翌誕生日後は「三十二」、そして「三十三」と毎年変えていました。34歳なら「三十四」ですが、手違いなどを理由にその歳は変えずに「三十三」のまま用いられ、翌35歳で「三十五」となり、以後、変えられることはありませんでした。

破天荒な性格でありつつも周囲には仲間が多かったことから、人を魅了する才能を持っていたといえるでしょう。

芥川賞との違いは?

芥川賞は直木賞と同時に制定されましたが、それぞれ異なる特徴があります。大きく違う点は3つあります。

まず、芥川賞は、由来となった芥川龍之介に倣い、純文学が対象になり、直木賞は大衆文学が対象になります。
2つ目に、芥川賞は無名または新人に贈られますが、直木賞は中堅作家も選考対象になります。
3つ目に、受賞した作品が掲載される雑誌が、芥川賞は文藝春秋、直木賞はオール讀物である点です。

細かいところでの違いは、選考会場が同じ建物であっても階が違うといったこともあります。また、違いではありませんが、もし芥川賞と直木賞の両方にノミネートされても、どちらか一つしか受賞できません。

直木賞の代表作は?

直木賞を受賞した作品は、実写やアニメーションなどで映像化されることが多く、作家名を知らなくてもタイトルは知っているというものも多いでしょう。読者の好みによって挙げられる代表作が大きく異なりますが、映像化され、知名度が高い作品を挙げてみましょう。

歴史小説といえば司馬遼太郎「梟の城」

1960年の第42回に受賞した、歴史作家の司馬遼太郎の作品です。

暗躍する忍者をフクロウに例えたタイトルの通り、司馬遼太郎が初期に多く発表していた忍者小説の一つです。連載当時は記者であった司馬遼太郎が作家になる転機となった作品でもあります。受賞と同年である1960年にはテレビドラマ化され、1963年と1999年の2度にわたって映画化されました。

有名なアニメーション映画の原作「火垂るの墓」

1967年の第58回に受賞した、野坂昭如による短編小説です。

スタジオジブリによりアニメーション映画化された同タイトルは、名作映画として国内外に広く知られています。第二次世界大戦の終戦時期に儚く消えた兄弟の悲劇を描いており、野坂昭如の実体験が盛り込まれている作品でもあります。セリフが多い文体である「饒舌体」で関西弁が用いられていますが、無駄がない見事なものだと選評を受けています。

ミステリーの傑作「容疑者Xの献身」

2005年の第134回に受賞した、ミステリー作家の東野圭吾による推理小説です。

人気の「ガリレオシリーズ」の第3作目となる作品で、短編で綴られていた前作までとは異なり、長編小説になります。国内のミステリーランキングにおいても評価がとても高く、前作を元にしたテレビドラマと同キャストで映画化もされ、人気を呼びました。

物理学者である主人公が大学時代のライバルと頭脳戦を繰り広げる様や、究極の愛の形というテーマから、推理小説から離れていた読者の心をも掴んだようです。

直木賞は広く知られていても、直木三十五本人や、著書についてはあまり知られていないようです。ゆかりの地である大阪市には直木三十五記念館があるため、貴重な展示物を見に足を運んでみるのも良いかもしれません。