芥川賞の受賞作に傾向や特徴はあるのか

純文学の新人賞といえば芥川賞が最高峰でしょう。近年、様々な職業の受賞者が話題を呼んでいますが、受賞する作品に傾向や特徴はあるのでしょうか。

芥川賞は作家の登竜門

芥川賞は1935年に第1回が開催され、以後戦時中を除き、年に2回選考されてきました。芸術性の高さが求められる純文学であることが選考対象のため、内容よりも日本語の美しい表現などが評価されます。

選考は文藝春秋の社員が候補作をしぼり、最終候補作を決定し、候補者の意思確認後に公表されます。最終選考は、著名な作家9名が選考委員となり審議され、最も優秀な作品が選出されています。該当作品がないとして受賞者がいない回や、受賞者が2名となる回もあります。

数ある作品の中から最終候補作に挙がるだけでも名誉なこととされ、受賞すれば「芥川賞作家」としての肩書きが得られ、無名または新人の作家が名を広く知らしめることができようになります。そのため、芥川賞受賞はゴールではなく、以後、作家として活躍するための登竜門とされています。

芥川賞の対象

作品としては、純文学である短編から中編で、雑誌に掲載された小説が対象となります。作家に関しては、新人、または無名であることが前提とされており、すでに知名度が高く、候補に挙がっても外された場合があります。ですが、過去には新人とは言い難い作家が受賞している回があったり、公募型の新人賞を受賞したりしている作家であっても、一般的には知名度が低いといった理由で受賞している回もあります。

何をもって新人とするかについては、明確な基準がはっきりとしていないようです。

芥川賞の特徴

選考基準が新人または無名の作家であるという点から、作品へ贈られるというよりも作家へ贈られる文学賞といえます。デビュー作が芥川賞を受賞するケースも多く、その場合は確かな筆力があるとされ、マスメディアでも大きく取り上げられています。また、デビュー作である場合は他職業に就いていることが多く、意外性が高いほど話題を呼びます。

しかし、もしノミネートされても受賞を逃した場合はどうでしょうか。ノミネートされたことにより知名度が上がり、他作品も人気を呼んで書籍化されるなどした場合、次回は新人と扱われるのか微妙なところになるでしょう。1回から3回程度、異なる作品が候補に挙がる作者は多いようですが、幾度も幾度も最終候補作に挙がり、落選を繰り返すことは少ないケースになるようです。

受賞者の傾向

明確な基準はありませんが、過去の受賞作の選評や読者の書評などを見る限りでは、美しい日本語であることはもちろん、より登場人物が鮮明にイメージできるような描写が多い作品が受賞する傾向があるようです。そういった点から、芥川賞を受賞した作品の中には、大衆文学に贈られる直木賞よりのものではないかと議論される場合もあります。

また、選考を文藝春秋の社員が行っている関係上からか、どうしても同社が刊行する「文学界」に掲載されている作品が最終候補作に挙がることが多く、受賞作の大半が文学界に掲載された作品になっています。

芥川賞以上に知名度が高い賞があるか

芥川龍之介の友人であり、文藝春秋の創業者でもある菊池寛によって制定された芥川賞は、若手の育成という点や文藝春秋の活性化ということも一つの要素でした。芥川賞または直木賞の受賞作が掲載される雑誌、また、それが書籍化されれば、出版社はもちろん書店の売り上げにも直結します。普段から本を読まない人であっても、芥川賞と直木賞の受賞作となれば、手にとることが多いでしょう。

「該当者なし」となれば話題性も少なくなるため、現在は全国の書店員が投票によって選ぶ「本屋大賞」なども賞として知名度を上げており、本や雑誌の売り上げに一役かっています。しかし、やはり芥川賞以上に権威や栄誉というイメージは乏しいようです。

数度、最終候補作となったものの受賞を逃し、現在は国内外で人気を呼ぶ著名な作家もいます。傾向や特徴をおさえることも大事ですが、すべてにおいて当てはまる訳ではないことを気に留めておくと良いでしょう。